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甘雨とドライオレンジ
#RECIPE
甘雨とドライオレンジ
#RECIPE
湿度が高い日がつづく。こんな時は決まって凝縮された甘味を口にしたくなる。外に出られない休日の午後は、ランチを軽くすませ、シャツの袖をまくる。洗い物はそっちのけで、甘味づくりに精を出すのだ。オレンジを5mm幅に切り、クッキングシートを敷いた天板の上に整列させる。グラニュー糖を浴びせたあとは、予熱しない100℃のオーブンで、まずは60分。
次にすべきは、手を洗い、ソファーに体を沈めること。心が自由になる物語を手に取って、その世界に入り込むことになる。主人公の置かれている状況を把握したあたりで、オーブンの音がわたしをキッチンに誘う。すっかり変貌した橙色をひっくり返していく。また、60分後まで、しばしの別れである。
物語が佳境に入ってきたところで、再びキッチンからわたしを呼ぶ声がする。「でも、もう少しだけ」と言いながら、更に10分ほど経過してしまった。真白なお皿に、柑橘を並べていく。そして、冷蔵庫からはよく冷えたオルタナティブアルコールを取り出す。最後に、いつものグラスをトレーに。とっておきのおやつとシャンディーガフは、エピローグまでのお供であり、私にとってこれが至福の時間である。